なんということだろう。
東京オリンピックが終わったら、不景気になって不動産価格も下がってしまう、と言っていたのじゃなかったか?
それが、現状はどうだ。株価は史上最高値を更新し、億ションという言葉が陳腐化したように何億ものマンションが建ち続けている。そしてそれが売れているのだから不思議だ。輸出企業は史上最高の利益を稼ぎ、人々は金が余っているわけでもないのに投資に血眼になっている。確かにこの10年間以内に投資を始めた人は失敗していないかもしれない。株価も不動産もずっと上昇しているから。一泊数十万円もするラグジャリーホテルが次々に建つ。インバウンド景気でコロナ時期の沈滞ムードは消え去った。好条件の投資用不動産は瞬間蒸発するように市場から消えてゆき、それでも不動産投資家は期待利回りを下げてでも投資用不動産を追い求めている。収益還元法が間に合わない。これは海外の不動産投資家の動きの影響が強い。日本の不動産は上海、北京、香港、ロンドン、ニューヨークなど海外の不動産に比べてもともと割安感がある。そこにこの円安だ。彼らにとってみれば日本において不動産のバーゲンセールが行われているように思えるのかもしれない。そして彼らは決断が速い。自国の資産を早く日本に移そうとするようにほぼ即決に近いスピードで不動産が買われてゆく。日本の投資家はそのスピードと資金力についてゆけない。人手不足を反映して30年ぶりに賃金も上がった。
こうして経済関係の表面を見ると、東京を中心として日本は景気がいい。
ひるがえって足元を見ると、世界第2位の経済大国であった日本のGDPはいつのまにか中国に抜かれドイツに抜かれ、来年にはインドに抜かれて世界第5位に転落するという。どうしてこんなことに?
海外の物価高騰と大幅な円安、人手不足を背景にコストプッシュインフレが進展し、賃上げ速度が追い付かず、庶民は日に日に貧乏になってゆく。貯金しかもっていない高齢者はお金の価値が下がるといわれて不安におののく。
かつては夢のマイホームなどと言われ、安定資産の代表格であった家が空き、それがなかなか売れない。それらは負動産などと言われ、相続時のお荷物だ。これも少子高齢化のせい?
少子化が進み日本の人口は減る一方だとか。人口は経済のエンジンだ。エンジンが小さくなれば馬力も出まい。貧しい「子供食堂」の実態に驚く。表面上の好景気の裏腹になんとも不景気な話である。
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