2024年2月22日日経平均株価終値が1989年12月の終値3万8915円87銭を超えた。不動産価格もバブルを超えたという意見もある。バブル入社世代の私は、当時の浮かれた気分を記憶していて、現在とは全く異なる雰囲気を懐かしく思い出しつつ、ここで当時と同程度まで達した(といわれている)現在の株価と不動産価格について比較してみたいと思う。
まず<株価>である。
当時の長期プライムレートは6.5%であった。ドル円の為替は150円程度、円安を背景に輸出企業が外貨を稼ぎ「ジャパン・アズ・ナンバーワン」、誰もが今日より良い明日を信じていた。高い金利は、企業収益にも理論上の企業価値にもマイナスの影響のはずが、当時の株価収益率(ROE)の平均は約60倍と、現在の約20倍と比べて3倍も高い。企業収益の伸び率を(大幅に)加味しなければ達しない数字である。一方、現在いわゆるマイナス金利が続いている。企業収益も円安(150円程度)を背景に輸出企業を中心に好業績で、低金利下で株価は高い水準を維持できる環境が整っている。収益をベースにした(投機的とは言いがたい)株価水準に見える。
さて<不動産>である。
株価における企業収益は、不動産の場合は賃料収入と見做せる。そして不動産価格は賃料変動率に左右される。株価同様に高金利は不動産価格を下げる要因の一つだが、バブル期は(企業収益と同じく)賃料の上昇率が(大幅に)加味され不動産価格を押し上げていたと考えられる。それを抑えるため、1987年に国土利用計画法の監視区域制度が創設され、1990年には金融機関の不動産融資に対する指導(いわゆる「総量規制」)が発動し、金利は8%後半まで上昇、その後不動産価格はバブル崩壊の象徴として2005年のリーマンショック前まで下落の一途をたどる。
リーマンショック後の2013年頃にアベノミクス下で放たれた「異次元の金融緩和」(いわゆる「黒田バズーカ」)以降、徐々に不動産価格は上昇に転じ今に至ることになる。この間約35年の市街地価格の推移をみると、バブル期から現在まで物価の上昇を除いたとしても全国住宅地においてバブル期の約8割、六大都市においては約5割弱に留まり、全体としてバブル期の水準には届いていない。最近、都心部で超高額なマンション価格が平均マンション価格を押し上げており、バブル超えの声も聞こえるが、一部局所的な収益率を度外視した売買であるという点が<不動産>と<株価>の違いではなかろうか。
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)