ある個人の方から相続する土地に関する話をお伺いした。当該地は、地方郊外の幹線道路に接道しているが、その幹線道路より地盤面が1m強低い。幹線道路からの出入りはできず、裏面の農道から出入りしている。
「利用価値が著しく低下している宅地」とは、①道路より高い位置もしくは低い位置にありその付近の宅地と比べて著しく高低差のある宅地 ②地盤に甚しい凹凸のある宅地 ③振動の甚だしい宅地 ④①から③以外で騒音、日照阻害、臭気、忌み等によりその取引金額に影響を受けると認められるもの この①から④のいずれかにより付近の利用状況からみて利用価値が著しく低下していると認められるものについては10%の評価減が受けられるというものである。
その方は、①に該当すると考え税務署と事前に相談したそうだ。税務署からは、当該地の状況に利用価値の低下は認めるもののその度合いが“著しい”とは言い難いとの回答となり、残念ながら10%の評価減は見送られたとのことだった。が、“著しい”か著しくないかに関し客観的なものは見出しづらくなんとも腹落ちしない。
当該地の接する幹線道路に同じ高さで出入りができる土地は、郊外型沿道サービス店舗が出店しており、そうした商業店舗で利用できるポテンシャルのある土地として路線価が付されていると考えられる。とすると、当該道路と同じ高さで出入り可能な土地と同じ正面路線価が評価に採用されるのでは、著しく不公平な評価となってしまうのではなかろうか。当該土地については、少なくとも道路と同じ高さに造成する費用に相当する金額は減価できるように思われる。
相続税法22条(評価の原則)では相続により取得した財産(別に定めるものを除く)の価額は「当該財産の取得の時における時価に」よるとしており、ここにいう時価の評価の基準が財産評価基本通達に定められている。この通達に従って算定された評価額を時価が下回る場合には、時価が相続税申告上の評価額として認められるはずであり、ここに正当な時価のエビデンスの一つとして不動産鑑定評価が用いられることになる。
同通達における路線価が保守的に時価より低く抑えられていることもあり、不動産鑑定評価が活かせるか否かは個々のケースによるが、評価を不動産鑑定評価額という数値で示すことは利用価値の低下度合いが“著しい”か否かの客観的な判断材料の提供にも繋がると考える。こうしたケースにおいても不動産鑑定評価が活かされる可能性を見出せる。