浜松市は、静岡県の西部に位置し、人口約80万人の居住する政令指定都市です。海・川・湖・山などの自然環境に恵まれ、沿岸部・都市部・中山間地域が存在する多様性から「国土縮図型都市」と呼ばれています。
また、日本有数のものづくり都市として知られ、何事にも果敢に挑戦してみようという気質「やらまいか精神」が根付いて数々の産業を創出しており、江戸時代からの綿織物と製材業、近代の三大産業と呼ばれる繊維・楽器・輸送用機器、近年の光技術・電子技術関連等の先端技術産業と時代に応じて多くの企業が発展・集積した技術集積都市です。そんな浜松市について、市街地の住宅地におけるここ20年間の地価推移を調査してみました。
浜松市の住宅地は、教育施設の多く立地する山手地域(北西部)、三方原台地上の地域(北部)、私鉄遠州鉄道沿線に広がる旧市街地(北東部)、天竜川沿岸地域(東部)、太平洋沿岸地域(南部)に大別されます。最も高額なのは山手地域に位置する山手町の地点で、2023年度の地価は坪55万円です。最も低額なのは天竜川沿岸地域に位置する鶴見町の地点で、2023年度の地価は坪17万円です。今回2003年と2023年の地価公示結果を比較調査した所、20年間における上昇地点の上位5地点はいずれも山手地域の地点(大平台、広沢、山手、蜆塚、佐鳴台)で、大平台の地点では20年間で約25%の地価上昇がみられました。
一方、下落地点の上位5位は天竜川、太平洋沿岸地域の地点(鶴見、瓜内、東若林、参野、本郷)で、鶴見町の地点では20年間で約25%の地価下落となりました。調査結果を総合すると、山手地域をはじめ高台の地域や中心部に近い旧市街の地域で地価は堅調に推移し、天竜川や太平洋沿岸地域では地価は軟調に推移したことが分かりました。
東日本大震災を経て災害に対する意識が高まる中、全国的に地価の二極化傾向が指摘されていますが、浜松市でも同様の結果となりました。令和2年に太平洋沿岸部に大規模な防潮堤(一条堤)が完成し、宅地の浸水面積を約8割低減する効果があるとされているおり、これにより沿岸部の住宅需要が持ち直すことが期待されます。
一方で、地価が2割以上上昇した地点があることは驚きでした。沿岸部の住宅需要が内陸部に流れていますが、これ程力強く上昇することは予想できませんでした。今回大きな上昇を示したのはいずれも市内中心部に近い中区の地点ですが、今後、大型の開発事業が計画されている郊外の浜北区などにも波及して欲しいと思います。
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)