9月20日、令和5年都道府県地価調査(令和5年7月1日現在の地価)が公表されました。神奈川県内の地価動向は、住宅地が2.1%(前年0.8%)、商業地が4.3%(同1.9%)、工業地5.2%(同3.9%)といずれの用途も上昇率が拡大しました。
住宅地についてみると、生活スタイルの変化による需要者のニーズの多様化を受け、郊外部の地価も上昇しており、湘南エリアも総じて堅調な伸びを示しています。
一方、小職が、現在事務所を置く、平塚市(「湘南どこまで」論争がありますが。)の住宅地の地価は、前年の▲0.1%から1.4%とプラスに転じたものの、同じJR東海道本線沿線の藤沢市(4.1%(同2.0%))、茅ヶ崎市(4.5%(同2.5%))に比べ低調である感は否めません。
市内及び隣接市町の商工業者、不動産業者との会話において、「平塚市、特にJR東海道本線以南の地域は、上記2市に比べ、街路が整然としていることに加え、『平塚』駅は上野東京ライン・湘南新宿ラインの一部列車の始発駅であることから、少し待てば、座って東京・渋谷・新宿まで通勤することが可能であり、居住面での利便性はむしろ高い。しかしながら、住宅地需要は両市に比べ弱い。」との声をよく聞きます。
2市に比べ、都心からやや距離が離れてしまう点はあるものの、住宅地の主たる需要者が重視する「居住の利便性・快適性」の点で決して劣ってはいないにもかかわらず、住宅地の地価が低調なのは、「イメージ」が影響しているのではないでしょうか。
都内在住者との会話において、「鎌倉、藤沢、茅ヶ崎には住んでみたが、一生に一度の買い物で「平塚」という選択肢はあまり考えられない。」と言われます。
平塚市の人口は、8年連続で転入超過となっていますが、上記2市に比べ都内からの転入が圧倒的に少ない状況にあります。やはり、都内在住者から見て、平塚は「住みたい」という魅力に欠けるまちのようです。
住みやすい「まちづくり」に、自治体は積極的に取り組まれていますが、都内在住者が「移住したい」と思える、イメージ向上等の取り組みについて、少し足りないのではないか、と常々感じています。
大都市近郊において、「居住の利便性・快適性」が十分であるにもかかわらず、平塚市のように、イメージのために、転入が限定的または流出超過となっている市町村は、意外と多いのではないでしょうか。
自治体は、人口減少対策において、まちのイメージ向上に積極的に取り組むことが、今後重要になってくるものと思われます。
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)