このところ、マンション価格が暴騰したり東京タワーを見下ろすような建物や一泊数十万円もするホテルができたりと、不動産に嵐が吹き荒れているような気がする。こんなときは「不動産とは何か」という基本に立ち戻って気持ちを落ち着けたくなった。
「不動産とは何か?」と問われたときに、「絶対に動かない財産」などと答えてはいけない。不動産については「土地及びその定着物は、不動産とする。」(民法86条)と、法律で定義されている。
(1)「土地」とはなにか
「土地」とはなにか、と問われてすんなり答えられる人はあまり居ない。定義がないからである。登記法その他の扱いから類推すると土地とは、「地表を境界点と境界線で区分されたその部分」と考えてよいだろう。ちなみに地表とは「地球上で水に覆われていない部分」を言う。すなわち、境界点と境界線が明確ではない地表は、土地ではないから不動産ではない。したがって土地が不動産であるために重要なことは、「境界点と境界線が明確であること」である。
(2)定着物とは
民法上の定着物とは、「土地の上に定着しているものであり、具体的には、建物、樹木、未分離の果実、移動困難な庭石や擁壁などである」、と説明されることが多い。しかし、不動産の売買契約においては、売主の心得と買主の心得とが異なる恐れがあるので、重要事項説明書ならびに売買契約書上は売買対象物について最低でも「土地、建物、それに付随する畳、建具、および門、塀、現状の庭木、庭石を含む。」と具体的に明示しているのが通常である。
(3)「建物」とは、
建物とは、①屋根および周壁などの外気を分断するものを有すること②土地に定着したものであること③その目的とする用途に供しうる状態にあること④不動産として独立して取引の対象になりうるものであること、と言う要件がある。すなわち建物であるためには、「構造上利用上独立して使用可能なもの」であると言う機能的な面が要請される。要するに「屋根があって壁で囲まれているもの」と考えて良いであろう。なお、建物は土地から独立した不動産であるとされている。このように建物と土地を独立したものと考えるのは日本の不動産登記制度の特徴である。
こうして基本の基本から静かに日本の不動産の状況を振り返ってみると、異次元の低金利、歴史的な円安と株高、格差の拡大など、周りを取り巻く環境によって振り回されてきているなぁと思うのである。