2024年3月27日に発表された令和6年地価公示によると、台湾の半導体製造最大手TSMCの進出が熊本県の地価に大きな影響を与えています。特に大津町と菊陽町の商業地は「熊本大津5-1」の年率+33.2%、「菊陽5-1」の年率+30.8%と全国1位・2位の上昇率となりました。この背景には、TSMCが2021年11月にJASMを設立し、菊陽町に工場を建設することを発表、それに伴う関連企業の進出が大きく影響しています。令和3年からの3年間で、「熊本大津5-1」は+60.4%、「菊陽5-1」は+66.1%の地価上昇が見られました。
菊陽町の住宅地「菊陽-301」も、年率+13.3%と熊本県内で2位の上昇率を示しました。住宅需要の高まりは、JASMおよび関連進出企業の従業員が熊本に移住することによるもので、地域全体で新たな住宅供給が急務となっています。市街化調整区域が多く、住宅用地の供給が限られているため、供給不足が地価上昇を加速させています。特に台湾から派遣される技術者300人とその家族は新築若しくは築3年以内の物件を希望しているため、100坪程度の中古戸建住宅を取り壊し、共同住宅を建築するケースが増えています。
商業地や住宅地だけでなく、工業地でも地価が大幅に上昇しています。2023年の地価調査によると、「大津(県)9-1」は年率+31.1%、「菊池(県)9-1」は年率+29.2%を記録し、全国1位・4位の上昇率となっており、JASM進出の影響が広範囲に及んでいることがわかります。
また、JASMでは2024年末の稼働に向けて従業員1700人のうち1200人を地元で採用する予定で、新卒者の月額給与は大卒が28万円、修士が32万円、博士が36万円と、熊本県の平均初任給(大卒約20.1万円、大学院卒約20.7万円、専門・短大卒約18.2万円)を大きく上回っています。この好待遇により、熊本県内で人手不足が表面化し、私の住む隣県の大分県でも人材流出の懸念があります。JASMの進出をきっかけに九州の国立大では台湾の大学と半導体などの6分野での研究や人材育成で国際連携協定を締結し、さらに九大はTSMCとも人材育成などで協定を締結しています。
一方、大分県内でも物流企業や関連企業の誘致・進出が期待されています。国土交通省は4月25日、熊本市と大分市を結ぶ高規格道路「中九州道路」の早期整備に向けた事業化検討を開始しました。これにより、竹田市や豊後大野市での物流拠点や半導体製造企業の立地ニーズが高まり、大分県の地価にも好影響が期待されています。県境を越えた用地取得を検討する企業も増加しており、広域的な経済発展が見込まれます。
JASMの進出により、熊本県の地価が急騰し、地域経済に大きな変化が訪れています。特に福岡空港や佐賀空港からも近い鳥栖エリアは、比較的安価であることから進出が相次いでいる。地価上昇の波及効果は隣県にも及び、九州全体の経済活性化が期待されます。この動きがどのように発展していくのか、今後も注目が集まります。