年が改まり、清々しい空気とともに寒さが身にしみるこの頃です。この寒さを過ごしていると、以前滞在していた常夏インドネシアが恋しく思われます。
インドネシアの国土は日本の約5倍の広さで、人口は世界4位の約2.7億人です。総人口の5割が30歳未満という若い国で、その半数がジャワ島に住んでいます。インドネシアの首都ジャカルタは政治・経済の中心地であり、1千万人以上の人々が住む大都会です。高層ビルが建ち並び、進化し続ける都会的な一面がある一方、オランダ統治時代の建物が並ぶ旧市街や、ローカルなマーケット、屋台が軒を連ねています。そしてジャカルタは「地盤沈下」「慢性的な洪水」「渋滞」「人口過密」「大気汚染」といった都市問題にも悩まされています。この問題を解決するために首都機能(政府機能)を新首都「ヌサンタラ」へ移す計画があります。
この新首都はジャカルタから北東に約2千キロ離れたカリマンタン島の東部に位置します。カリマンタン島はジャングルの広がるオランウータンなど希少動物の生息地として有名です。現在、2045年の完成を目指し、土地の造成、道路の敷設等、基礎インフラの整備が進められているところです。総土地面積は25万ヘクタール、中心部は5万ヘクタールという巨大プロジェクトです。
都市問題と言いますと東京も一極集中は今なお進行していて、大地震等の災害発生時の被害の拡大や政治・経済・文化等の中枢機能の停止が懸念されています。首都機能移転に関する議論は一時期盛り上がりを見せ、昨年の春に文化庁が中央省庁で初めて東京・霞ヶ関の本庁を地方に移転し業務を京都で行うようになりましたが、その後はその話題を聞くことはあまりなくなってしまいました。
しかしジャカルタも今年大統領選が控えており、現大統領の任期が満了してしまうことからこの壮大な計画にも不透明感があることが否めません。実際長年の課題だった渋滞問題に関しても、インドネシア初の地下鉄MRT(ジャカルタ都市高速鉄道)やスカルノ・ハッタ国際空港とジャカルタ市内を結ぶエアポートリンク等が開通したことでかなり緩和されたように感じます。
歩道も整備され、新たな高層ビルの建設やショッピングモールの開業が進み、確実に住みやすい街となっています。首都移転の必要性について議論もあるようですが、堅調な個人消費に支えられ経済成長の著しいインドネシア、政府機能が移転したとしてもジャカルタは経済の中心地として今後ますます発展していくだろうと期待されます。
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)