近年の気候変動による災害が大規模に、かつ激しくなってきていることから、地域のハザードマップに対する住民の意識が向上してきています。私の住まいも多摩川に近いため洪水や内水氾濫が危惧されますので役所からハザードマップを取り寄せました。網掛け、色分けにより浸水想定区域や浸水の深さ、洪水による家屋等の倒壊の危険のある区域、避難所等が示されています。示されている危険区域を多摩川に向かって歩いてみました。あれっ、これは何?街路の電柱に水害時の浸水の深さが○○メートルになる予測が記載された看板がありました。この街路沿いのマンション、立派な7階建ての建物ですが、想定浸水○○メートルならば、1階は勿論、2階の一部も浸水が予測されるではありませんか?マンションの価格に大きな影響が考えられます。鑑定評価のときにハザードマップ調査(価格の減価要因)が必要不可欠になってきたのはやむを得ないことです。
このような気候変動対策に資する緑地保全が重要視され、都市の緑地の効用が見直されてきています。その反面、神宮外苑の再開発計画で都市の緑地比率の減少が危惧されています。
民間事業者による緑地の創出事例は多くなってきていますが、開発により現在の緑地の減少はあってはならないと思われます。貴重な都市緑地は積極的に保全・更新が法的にも財政的にも行われることが望まれます。
川崎市市制100周年記念事業として第41回全国都市緑化かわさきフェアが国土交通省の提唱のもと川崎市と公益財団法人都市緑化機構の共同主催でおこなわれています。基本理念は、みどりを通して、人と人、人と暮らしが緩やかにつながり、心豊かな暮らしを生み出してゆく「みどりのムーブメント」を推進することを提唱しています。具体的には、富士見公園、等々力緑地、生田緑地の3カ所でフェアが開催されています。緑地の効果は①環境保全効果、②防災効果、③利用効果、④心理的効果があるとされています。すなわち、人と人、人と暮らしのつながりに大きな影響があり、生活環境および人の活動環境にプラスとなっていること(価格の増加要因)が予測されます。
不動産鑑定評価にあたって、ハザードマップの「価格減価要因」に加え、都市緑化の「価格増加要因」も検討してはどうでしょうか?
都市緑化は住環境を高め、ひいては土地価格の増加要因のひとつになってきていると思われます。
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